2014年7月31日木曜日

北海道ツアー

 
暑中お見舞い申し上げます。
7月最後の週末、札幌で統合医療と機能性食品に関する国際会議がありました。統合医療とは西洋医学に東洋医学などの伝統医学を融合させた、EBMというよりは経験から得られたものを大事にする、補完・代替医療ともいわれるものです。そこにはいわゆるサプリメントが登場し、さらにはアロマテラピー、鍼灸も入ってきている。今回の会議は、免疫力を賦活させる効果があると期待される機能性物質の基礎と臨床の検証がなされました。海外からの参加は、アジア地区が多い中で欧米からもたくさんの研究者が参加し、避暑を兼ねた札幌ツアーで盛り上がっていました。
健康食品やサプリメントといわれているものは、今やTVのコマーシャルで盛んに宣伝されていて、その経済的効果は図りしえないようですが、医学的な根拠に乏しいことから薬品ではなく食品扱いになっている所以です。薬品扱いとすると、薬ですから大変な準備と薬効を示す基礎データー、さらには臨床試験、臨床治験、という大きな壁を乗り越えないといけません。一方、健康をサポートする(病気の治療ではない)目的で作られた保険機能食品と言われるものは、健康増進法や食品衛生法の規制下にあり、特定保健用食品と栄養機能食品に分けられているようです。これらの保健機能食品は多くの健康食品のなかで、国の定めたある一定の基準を満たしたものであり、特定保健用食品(トクホ)は表示マークもあって、一般化しています。とはいえ、健康食品、機能性食品、サプリメントなど、表示自体が混乱していて、全貌を掴むのは難しいところです。
さて、北海道ですが、広報によると、道は、「北海道フード・コンプレックス国際戦略総合特区」における国との協議を経て、加工食品に含まれる機能性成分について、健康でいられる体づくりに関する科学的な研究が行われた事実を認定する「北海道食品機能性表示制度」を平成25年4月1日からスタートさせました、とあります。食品衛生において国の規制が厳しい中で北海道が独自に作った制度であり、北海道らしさが感じられます。北海道版トクホということなのでしょうか。という背景のなかでの国際会議でしたが、本論は複雑なので、また利益相反になるのでこの位にしておいて、表題のツアーに移ります。
ツアーというのは札幌の後に洞爺湖まで足を延ばしたという意味ですが、今回は自転車ツアーにも挑戦しました。本州の猛暑をさけて涼しい札幌で自分のロードバイクで走ろうということです。札幌は市内や郊外にサイクリング専用道路を含めたコースがあって、市も応援しているようです。さて、自転車をどう運ぶかで思案しましたが、宅配ではなく飛行機の携帯品として預けるのがお金もかからないということで、トライアスロンの選手が使うようなしっかりしたロードバイク用輪行バッグを購入しました。結構の大きさですが、前もって連絡をしておけば飛行機に預けることが出来ます。伊丹で預けて新千歳でもらい(回転台ではなく直接手渡ししてくれます)、あとは市内行バスでホテルまで運ぶという段取りです。何とか痛まずにホテルで組み立て(ホイールを着けるだけ)も完了。
初日の午前中(午後から会議)はまずまずの天気で、朝6時ごろにスタートして豊平川河川敷のコースを南へ、少し行くと真駒内公園につき、ここから一般道を下って札幌市を大きく迂回するコースを取りました。帰りは新札幌の近くから市内に向い、途中は大谷地というあたりで朝食、その後、以前は鉄道路線であった自転車専用コース(白石サイクリングコース)を使っての帰りとなりました。10時ごろに市内に帰り、時間があったので丸山公園を回ってホテルへ。幸いこの頃に丁度雨が降ってきました。走行距離はGPSを使ったナビで78キロほどでした。涼しいので何とか走れましたが、関西では熱中症ものでしょう。
洞爺湖は翌日の夕方にバスで入り温泉を楽しみ、翌日は午前中サイクリングで午後に新千歳空港へ移動、18時過ぎの大阪行で帰る予定でした。日曜の天気は大荒れで、雨風が強く、洞爺湖の花火大会も中止になっていました。ところが翌日は快晴、自転車日和になりました。目指すは今回の目玉である洞爺湖一周です。この日も6時前に朝食前ですがホテルを出て、反時計回りに湖畔を走りました。信号もなく、車のほとんど走っていなくて、専用道路という感じです。左側の湖畔を眺めながら、幾つかあるキャンプ場や芸術的オブジェも楽しめ、あまりアップダウンもない約40キロのコースでした。温泉街の丁度向かい側の記念公園で、コンビニで買ったパンを朝ごはん代わりに食べて少し休憩、約二時間の快適な洞爺湖一周でした。
その後は、もともとは昼前まで昭和新山や周りを楽しむ予定でした。しかし帰りが早かったので、観光組のバスに間に合うことから、まずは自転車の輪行バッグへの収納(これで汗をかきました)、その後は屋上に近い展望風呂で走ってきた洞爺湖を眺めて至福のひと時。何とかバス組の出発(9時半)に間に合って、後は登別の近くの自然公園を巡って帰途につきました。もとの予定ではJR洞爺湖駅から空港までまさに輪行としていたのですが、駅の階段を重い(12キロ程度)輪行バッグを担いでの苦行(?)が避けられて、観光を兼ねたバスでのんびりと空港まで帰れて良かったです。洞爺湖一周でもう終わりとした決断が良かったと自分で納得しました。
 走行マップと幾つか写真を載せさせてもらいます。神戸に帰ったら夏の盛りで、連日猛暑です。なんとか体調を崩さずにきましたが、油断しないで後1か月を乗り切りたいと思います。皆様も体調管理にお気をつけてください。


 
 




 








 


2014年7月22日火曜日

在宅薬学会

この連休中に大阪で第7回日本在宅薬学会が開催されました。私は顧問でありますが、その理由は①発起人であり理事長の狭間研至医師が阪大第一外科の同門であること、②学会設立時に兵庫医療大学で薬学6年制教育に関わっていたこと、と思います。昨年から薬学教育からは脱出しましたが、これまでの延長でサポートさせてもらっています。在宅医療には薬剤師の関与が重要であるという先見性の高い活気ある学会です。今回は初日しか出席できませんでしたが、在宅医療と薬剤師が当然ながらメインテーマで、中でも薬剤師がチーム医療に一員として果たす役割についてのシンポジウムがあったり、特別講演で厚労省保険局長の唐澤剛先生の社会保障と税の一体化(追加、正しくは「地域包括ケアと薬剤師・薬局の役割」)の講演があったり、私も結構楽しんで聞かせてもらいました。感想を以下に書かせてもらいます。
狭間理事長がそもそも言い出したのは、薬剤師もバイタルサインをとりましょう、であり、これが従来の薬剤師を薬局や病院薬剤部から表に出すきっかけとなったのであります。当初は先頭で言っているのが医師であることもあって周囲は懐疑的でしたが、今はこれが大きなうねりになって薬剤師を在宅へと動かしています。今回も在宅医療の現場からの声を聞いて、在宅医療を支えているのは看護師と薬剤師であると認識しました。バイタルサイン、という一言が世の中の医療を変えたと言っても良いでしょうが、狭間理事長の周到な計画と全国を走り回るエネルギーがそうさせたのでしょう。
その現場の話でよく話題になるのは、お年寄りが本当に沢山の(15とか20種類)内服薬をもらっていて、それが殆どの服用されずにおかれている(溜められている)事実でしょう。医療費うんうんもありますが、医師の責任もあるのは当然です。保険薬局の薬剤師さんが敢えてそこにメスを入れようとしていることも分かりました。経営より患者さんの健康、が薬剤師の心意気として感じられました。日本の医療費は,技術料が安く,薬代に多く使われていることは以前から指摘されていることですが、薬剤師の役割が変わってきたことで改めて注目され、また改善が期待されます。こういう問題を日本医師会はどう考えているのでしょうか。医師の側からすれば、日本の恥でもあります。製薬業界もこれに甘んじていないで自らこの問題に踏み込んできて欲しいと思います。医療の無駄を一つ一つ洗い出して改善するのは誰の責任なのでしょうか。出席の方も指摘していましたが、薬局に来る処方せんが3ページにもなる、何とならないのか、欧米のように1枚だけ、3種類までしか書けない(根拠は不明)ようにしないと、といった意見はどこにぶつけたらいいのか。大学病院でも診察医ごとでは処方薬の制限が既ありますが、複数の診療科にまたがると瞬く間に数が増えていくのが実態のようです。
さて、今日書きたかったのは、前にも少し触れた,在宅医療の「宅」とはです。狭義の宅は,自宅でしょうが、それは不可能に近くなっていますし、これからはこの宅、をどうするか国の施策にかかっています。そういうなかで、唐沢局長は、社会保障と税の一体改革のあらましを説明されました。超高齢化社会突入、団塊の世代が高齢者に入る2025年問題、消費税の使い方、そして地域包括ケアシステムがどうして必要になったかの説明でした。この目玉の「地域包括ケアシステム」は、高齢者への医療と介護の今後を住まいを軸(中心)にして進める施策で、住み慣れた地域で,安心して暮らし続けられるように、医療・介護・予防・住まい・生活支援、を一体的に提供します、という謳い文句であります。この問題に何人かのパネリストは意見を出していました。」皆さん地域で本当に頑張っておられますが、たとえば東京都の中心の区ででは、住宅事情や人口過密もあり、ケア付き住宅などの宅を新たに作ることは不可能であること、自宅で一人住まいをしていて現在のマンパワーや関与する職種ではケアが行き届かない現実、介護と病気が分けられないこと、などなどが浮き彫りにされていました。
私が思うに、まだ状況を充分把握していませんし、これから10年先のことは読めませんが、この包括ケアシステムの第一印象は、ほぼ地域への丸投げではないか,ということです。必要なときに必要な医療・介護サービスを受けられる社会へ、と言いながら、一方では地域の老人クラブ、自治会、ボランティアー・NPOなどガ支える仕組みと書かれています。国は予算面でいろいろ支援することがパンフレットに書かれていますが、ひねくれた見方をすれば、国は最低限のお金で、後は自治体や地域でお互いに支援して、住みよい地域を自分たちで作って行きなさい,と読めるのではないでしょうか。行政は、空き家が多い集合住宅や団地の活用も考えておられるようですが、余った所の活用が主で良いのでしょうか。ケア付き老人ホーム(例え)などを国がしっかり用意するべきと思うのは素人考えかも知れませんが、デンマークの老人介護対策を見れば分かります。地域中心で出来る所と、そうではなく根本的な施設や支援システムが不可欠な所、の切り分けも必要でしょう。
公衆衛生や介護などの全く素人の外科医が思いつきで言っても何にもなりませんし、失笑を買うだけでしょうが、このブログの「論点整理から課題解決へ」の趣旨に沿って気ままに書かせてもらいました。それにしても、薬剤師の意識も役割も変わって来たことを実感した1日でした。来年の大会が楽しみです。

写真は狭間研至理事長の大会総会での挨拶。




2014年7月14日月曜日

市民公開講座 心不全への挑戦

  昨日(13日)は私が理事長を務めている神戸国際医療交流財団の市民公開講座の日でした。財団の社会貢献としての事業の一つである先進医療の普及啓発ということで、今回は表題のタイトルで、副題を「人工心臓・再生医療への期待」として神戸は三宮で開催しました。(案内チラシ参照)

究極の心不全治療が、今や心臓移植・再生医療・人工心臓の連携で進んでいることを知ってもらう企画で、心臓移植は私と日本臓器移植ネットワークの小中節子理事が担当し、再生医療は財団理事で京都府立医科大学の五條理志教授(心臓外科医)にお願いしました。さらに今回は植込み型補助人工心臓(VAD)に焦点を当て、この分野の第一人者である東京大学特任教授(現在は東京都健康長寿医療センター副院長)の許俊鋭先生をお呼びして、補助人工心臓全般と最新情報を熱弁で紹介していただき、加えて兵庫県で植込み型VADの第一例を手術された兵庫医科大学の宮本裕治教授に症例の具体的な紹介をして頂きました。術後1年を少し超えた今は完全に社会復帰(仕事に戻っている)されている様子のヴィデオには皆さん驚いておられました。

今回の目玉は、現在のところ国内で保険償還されている(但し心臓移植へのつなぎ、ブリッジに限られている)4機種の実物を各企業にお願いして会場で展示してもらったことです。エヴァハート(サンメディカル)、デュラハート(テルモ)、ジャービック2000(センチュリーメディカル)、そしてTCI-ハートメイト(ニプロ)の4機種ですが、各企業の方々にはお休み中にも関わらず展示にご協力頂き、感謝です。休憩時間にはデバイス(ポンプ)やバッテリーパックなどを実際に手に取ったり、拍動なしで水(血液の代わり)が勢いよく駆出される様子に感心したり、皆様喜んでおられました。

このように、三つの重要なテーマをコンパクトに纏めながらも補助心臓に重点を置き、さらに実物の展示が加わり、手前味噌ながら面白い企画になり、地元のメディアの事前紹介もあり、140人以上が集まる大盛況でした。用意した椅子が足らなくなって、立ち見の方も出る始末で、うれしい悲鳴でもありました。実は、お客さんが少ないのでは心配し、演者の友人関係や学生さんに前もって声を掛けたりしたお蔭かと思います。私の中学校の同窓生も先生を含め9人も来てくれていました。許先生も出身は大阪なので、旧友が危機に来られ、ミニ同窓会をされていました。兵庫県の移植推進団体や神戸市の方にも応援をいただきました。

今日の地元の新聞にも紹介されていました。移植はドナー不足が深刻であること、VADは目覚ましい発展を遂げているが日本ではまだ適応が移植へのつなぎしか許可されていない現状、再生医療にはまだまだバリアーが沢山あること、などが理解されたようです。地元の第一例はやはり注目されていました。詳細は省きますが、感想文を見ますと、こういった企画をもっと進めてほしいという希望や、我々への励ましの言葉、そして自分の心臓病への理解が深まった、などのご意見でした。雨模様のなか、多数のご参加、有難う御座いました。
 

2014年7月7日月曜日

小児の心臓移植を支える方々

 先週は岡山で小児循環器学会が開かれた。50回の記念大会で、岡山大の佐野俊二教授が会長。先天性心疾患の診断治療について、循環器小児科と小児心臓外科がジョイントする学会で、海外からも多くの招聘者もあり、賑やかに開催された。会員懇親会では、再び「マグロ解体ショウ」があって大いに沸いていた。  

     さて、最終日にあった「心臓移植への提言:心臓移植を受ける子どもと家族への多職種連携支援」について紹介する。これまでは関連学会では移植の成績とかドナーの問題が多く取り上げられたが、今回は外科医、小児科医、レシピエントコーデイネーター(Co,看護師)、チャイルド・ライフ・スぺシャリスト(CLS),臨床心理士、そしてソーシャルワーカー(SW)、が一堂に会した多職種が集まるこれまでにない企画であった。重い心臓病を持った子供さんが心臓移植という究極の医療を受けるときに、単にチーム医療では片付けられない多くの課題があり、まさに選ばれた専門家が集まらないと移植にも到達出来ないし、手術も成功しないし、移植後の管理や社会復帰も出来なくなる。そこには子供特有の問題へ対応できる専門家が不可欠である。今回の演者はそれぞれ違った施設からであるが、こういった方々各施設で揃えるということがこの10年ほどで進みつつあることも分かった。小児の心臓移植はまだ我が国では10例のも満たないし、11歳以下の小児の心臓移植ができる施設も4施設と限られているとはいえ、関係者の努力でこの仕組みも我が国で着々と進んでいることが垣間見えた。  

   トップバッターの外科医は、米国で活躍中の今村道明先生で、米国で小児心臓移植や補助心臓の経験ではトップを走っている。我が国からの小児の患者さんを引き受けておられる。発表では、米国での小児(18歳未満)の心臓移植は昨年470例(55施設)で待機は平均で2か月である。アーカンサス小児病院での移植チームについて紹介があり、小児の外科医は二人であるが、内科医、肺専門医、病理、NP(ナースプラクテショナー)、栄養士、などが基本チームに加わっているのが特徴である。日本人の外科医がここでチーフを務めていることは多いに誇れることである。今村先生は心不全のセッションでも講演されていたが、これからも多くを学びたい方である。小児科医としては東京女子医大の清水美妃子先生が登場し、小児循環器医の役有の重要性を強調されたが、我が国の小児での心臓移植適応患者数は約50例と予測されていた。

   レシピエントCoがお二人登場(国循と埼玉医科大)され、その役割を紹介されたが、今や日本の心臓移植はこの方々なしでは進まないことが分かり、日本移植学会が中心となって教育認証制度を作ってきた成果と考えるとうれしい限りであった。とはいえ、多くの役割が降りかかっていて、看護師は患者ケア、という枠組みでは限界があることも明白になってきたようだ。役割から言うと、いつまでもコーデイネーターで良いのか,と言うことである。移植の準備から登録・待機、そして移植後フォローと、守備範囲が広すぎる。VADのことまで担当するのは無理である。では数を増やせば良いのか,というとそうでもない。コーデイネートする職種と、より治療に介入できる看護職者が別にいても良いはずである。この辺りのことは最後に述べる。

    今回の企画には、SW、臨床心理士、そしてCLSが登場したのが特徴である。臨床心理士としては阪大病院の方が登場したが、この方は私の在籍中から小児の移植に関わって頂いていた。子供さんへの生体肺移植を行ったが、10歳の子供さんは当初は移植を受け入れるのは難しい状況であったが、病気のこと、移植のこと、薬のこと、などを2日月程かかって説明し、移植に到達できたのもこの方のお蔭であった。その後も大事な仕事をされている。最後に紹介するのはCLSである。日本ではまだ馴染みが少ない職種であるが、米国に教育認証制度があり、それを取った方が日本で30人もおられるそうである。そのお一人で、阪大病院の小児医療センターで活躍中の方の発表があった。CLSは治療経過に添った心理面の治療介入を通して患児と家族に心理社会的ケアを行う医療専門職と説明された。がんや移植、慢性疾患で入院中の子どもさんを、心理学をベースに遊びや漫画などを通してサポートするまさに病気の子供さんの命を支える専門職で、演者のかたは阪大病院で素晴らしい成果をあげられている。移植医療には限らないが今後我が国の小児医療では不可欠の職種と思われた。阪大小児科の大園教授の英断に敬意を表したい。一方、我が国ではこういう心のケアを専門とする医療専門職が臨床心理士にしてもなかなか制度化されないのは何故であろうか。医師側にも責任があるのではないかとも感じられた。  

     さて、私は最後にコメントをさせてもらったが、10年でのこの分野の他職種連携が進んでいることにびっくりしながら、関係者の努力、移植施設の病院上げての努力に敬意を表した。一方、Coの方からの発表で,看護師というベースから当然ではあるが、患者さんのケアが中心であることが述べられた。医師側はキュアであり、平行線の様に見えるが,そこを橋渡しするのがコーデイネーターであり、登場した各専門職である。しかし、米国のNPを見ても分かるように、あるいは日本のICUでの看護師の医療への介入を見ても、看護師はケア、という概念をどう変えていくか,移植現場でも問われている。私は移植医療現場がその良いテストの場であると思う。座長の東京女子医大看護学部の日沼教授に振ってしまったが、今後は専門看護師や特定看護師の出番を期待したい。しかし、日本では看護の高度専門職や今回登場した他の医療専門職者にその役割に応じた働く場を病院側がどう提供できるかが問われている。この点ではまだ緒についた所である。管理側の見方である、移植医療が進まないと雇えないとか、診療報酬加算がないと無理、といイタチごっこである。何とかならないかという意識を新たにした。司会のもう一人は,阪大の福島教偉教授で、素晴らしい企画と要点を絞った議論に感謝。